水道橋博士 小中学生の頃から『ユダヤの商法』を読む、過剰な読書遍歴
Q11.水道橋博士にとって“本”の魅力とは?
■子供の頃からの活字中毒、重症につき。
読書家かどうかはともかく、オレは子供の頃から活字中毒ではありますね。小学校の図書館にあるポプラ社の江戸川乱歩シリーズを全巻読むのも校内でいちばん早かったし、家が商売をやってたから、父親の本棚から変な本ばっか持ち出してたね。
藤田田(日本マクドナルドの創始者)の『ユダヤの商法』とか『金持ちラッパの吹き方』とか、糸山英太郎(「仕手戦の名手」と呼ばれた実業家)の『怪物商法』とか邱永漢(「株の神様」と呼ばれた実業家)の本とかを小中学生の頃から読んでいたんですよ。電車でそういう本を読んでいると、「キミは何を読んでるんだ!?」ってよく聞かれましたね(笑)。
父の本棚で言えば、吉川英治や司馬遼太郎の箱入りの全集をよく読んでました。漢字が読めないのに、そんなのも気にせず勢いで一気読み。とにかく『三国志』なんか、内藤陳さんじゃないけど、今でも生涯で一番面白かった読書体験です。
同世代の人は皆、同じ本を読んでる世代認識ってありますよね。筒井康隆や小林信彦とか五木寛之とか、あるいはエッセーだと遠藤周作か北杜夫が、どっちが好きか、狐狸庵先生派かドクトルマンボウ派か、今なら(村上)龍派、春樹派みたいな感じで言ってましたね。それについて話せば、ほぼ世代がわかりますよね。SF小説の基礎的なものとか、今、読まないですよね。
でも、子どもの頃と今では本を“読む感覚”がまったく違うんですよね。今はどんな本を読む時でも「書評を書く感覚」で読んじゃう。これを読んだら、ブログにこう書こうとか、誰かに書評を頼まれたときのフレーズとか……。映画を見る時もそうですね。後で感想を求められたら、こう答えようとか、常にそういう二次使用が頭のなかにあるんですよ。純粋にエンターテインメントを“浴びる”とか“楽しむ”みたいなことは、もう少ないですね。
それに比べて小学校や中学校の時に読んでいた頃というのは、それとはまったく違いますね。本当に心奪われて、その本の世界の中に(気持ちが)持っていかれてる。そういう状態で本を読んでいる人、そんな感情で本を読める人に憧れますね。
- 1
- 2